乱反射 (著)貫井徳郎

貫井徳郎さんの【乱反射】を読んで、貫井徳郎さんの作品を他にも読んでみようと思いました。


乱反射 (朝日文庫) [ 貫井徳郎 ]

物語冒頭から引き込まれます。

2歳の幼い命が奪われてしまうので、子どもを持つ母親にとっては苦しいです。

だからこそ、なぜ小さな命が奪われることになったのか、

主人公と母親の気持ちが痛いほどわかり、感情移入していきます。

なぜこの事故は起きたのか?父親の加山は徹底的に犯人を追い求めます。

結果的にはたくさんの人間が関わっていますが、しかしそれぞれみんな自分が

その小さな命を奪ったことに関係しているなどとは思いもしません。

それぞれの事象は一人一人のほんの少しのルール違反が積み重なり連鎖していますが

誰一人として子の命を奪った犯人として法律では裁くことができません。

そして、この物語の最後に私は背筋が凍る思いでした。

『みんなやっているから、やってもいいだろうと家庭ごみを[捨ててはいけない]

と書かれているサービスエリアのゴミ箱に、無理やり押し込んで捨てていた』

という過去を加山は思い出すのです。

そう、自分が出会ってきたほんの些細なルール違反をした人たちと

自分自身も同じだったということに気づくのです。

大事な息子を殺したのは自分だったのだと後悔し絶望します。

 

読後、頭からなかなか離れませんでした。色々なことを考えさせられます。

もちろん、全くルール違反せずに生きている人もいるかもしれません。

でも、急いでいるから、誰も見ていないからと赤信号で渡ったりしたことが

私にはあります。

また、誰だって気づかないうちに誰かを傷つけているのかもしれません。

ほんの小さなルール違反、モラル違反が

何かの大変な結果につながってしまうのかもしれないと改めて思います。

コロナで緊急事態宣言が出ている中、駐車禁止になっているところへ行って

海へ行く人もいます。

自分さえ良ければ、という考えはこの状況を長引かせるだけだし、

自分の行動で誰かを死に至らしめてしまうかもしれません。

だから、乱反射の感想を書きながら

やっぱり

Stay Home

だなと思いました。

 

最後に乱反射の意味です。(goo辞書より)

表面が滑らかでない物体に光線が当たって、いろいろな方向へ反射すること。